大阪弁護士会所属 三木秀夫法律事務所

お問合せはお気軽に 電話番号06-6361-7557 大阪市北区西天満4-9-12 リーガル西天満ビル601号室

2017年3月
« 11月    
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031  

大阪弁護士会所属 三木秀夫法律事務所

電話番号 06-6361-7557

〒530-0047大阪市北区西天満4-9-12リーガル西天満ビル601号室

ブログ

10月31日に赤坂御苑で開かれた秋の園遊会で、山本太郎参院議員が、天皇陛下に手紙を手渡した行為が波紋を呼びました。手紙の内容は詳細不明ですが、伝えられるところでは、福島の子どもと原発労働者らの被ばく被害を訴えた手紙とのことです。国会などで「天皇の政治利用ではないか」と厳しい声が上がり、ネットなどでも批判がヒートアップしました。

たしかに、山本議員のこの行動は、良識・マナーといった面からは極めて「不適切」といった感じがしました。しかし、山本議員を擁護する気はありませんが、今回の事例を冷静に考えてみると、パッシングする側の論理において、いくつか法的に気になる点があります。

■政府・議員からの批判
山本太郎議員の園遊会でのこの行動に対して、政府や議員など各方面から手厳しい意見が相次ぎました。安倍晋三首相は周囲に「あれはないよな」と不快感を示し、自民党の石破幹事長は「見過ごしてはならないことだ」と言明しました。下村文科相は「議員辞職ものだ」、公明党の井上幹事長は「極めて配慮にかけた行為ではないかと思う」、民主党の松原国会対策委員長も「政治利用を意図したもので許されない」と、批判のオンパレードでした。

ただ、そこでの批判の論理構造を見てみても、なぜ山本議員のこの行動がルール違反なのかの明確な説明は見当たりませんでした。「怪しからん」「一議員の分際で自分から話しかけて、しかも手紙まで渡すなんて」というような雰囲気でなされていて、法的な面からのアプローチは少なったように思えます。園遊会の法的な位置づけ、請願法との関係、「天皇の政治利用」について考えてみます。

■園遊会の法的な位置づけ(「公的な場」か「私的な場」か)
そもそも、今回の園遊会は、天皇陛下による公的なものか、それとも私的に行われた行事なのでしょうか。もし私的な行為としたら、プライベートな会に私的に招かれた客が、ホストに話しかけたり、手紙を渡したりする行為は、極めて私的な行為ということになり、そこで他者からとやかく非難するのもおかしなことになります。

この点で、園遊会が法的にどういう位置にあるかが問題ですが、「天皇の公的行為」という位置づけがなされています。

日本国憲法では、天皇が行いうる行為は「国事に関する行為のみ」に限られています(4条1項)。しかし、それ以外に、講学上「天皇の公的行為」というものがあるとされています。これは、国事行為には該当しないが、純粋な私的行為ともいえず、公的な意味がある行為のことで、園遊会はそれに当たるとされています。

憲法解釈学では、天皇のこういった公的行為に関して、その存在を否定する説も含めて、従来からいくつかの説が唱えられてきました。

(1)三行為説:これは、「国事行為」と「私的行為」のほかに「公的行為」を認める説です。その中でも、①象徴行為説(象徴としての地位に基づく公的行為として容認するもの)と、②公人行為説(内閣総理大臣などと同様に公人としての地位に伴う行為として容認するもの)があります。
(2)二行為説:これは、「国事行為」と「私的行為」のみを認める説です。その中でも、①否定説(中間の公的行為のようなもの認められないとするもの)、②国事行為説(式典参加や園遊会などは憲法第7条第10号の「儀式を行ふこと」として国事行為に含まれるとするもの)、③準国事行為説(国事行為に密接に関連し、国事行為に準じる準国事行為として容認するもの)などがあります。

■実務上の扱い
学説はともかくとして、実際の取り扱いとしては、日本国憲法第3条に、「天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。」という規定に基づき、天皇の公的行為は、内閣の責任のもとで行われています。

このような公的行為については、「宮廷費」として、毎年国の予算で計上されています。国賓を招く宮中晩餐会、国民体育大会(国体)や全国植樹祭への地方訪問などがここから支出されていて、園遊会の費用もここから出ているようです。

以上のことからして、今回の園遊会は、天皇陛下の公的行為として行われていたもので、単なるプライベートな行為ではないということが分かります。従って、参加する側も、単なる私的会合に出るのとは違ったレベルの相応のルール(暗黙も含めて)に注意を払うべきであるということになろうかと思います。

■請願法との関係
今回の騒ぎで、山本議員の行為は「請願法に反する」というような話が飛び交っていました。本当にそのように言えるのでしょうか。

そもそも天皇陛下に対して「請願」ということが認められているのかという疑問については、YESということになります。

実は、請願法第3条では、「天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない」とされていて、天皇への請願を認めているからです。

■提出先について
ただし、天皇陛下への請願においては、請願法では、前述の通り、「天皇に対する請願書は、内閣にこれを提出しなければならない」として、内閣に提出することになっています。したがって、もし、山本議員の手紙が請願ならば、出す先は天皇陛下に直接ではなく、内閣に出すべきことになります。

ただし、提出先を間違って出したからといって、罰則は定められていません。逆に、その場合は、受け取った官公署は、請願者に正当な官公署を指示し、または正当な官公署にその請願書を送付しなければならない、と定めています(第4条)。国民主権のもとでは、国民からの請願は大切に扱うことになっています。

こういったことからしてみると、山本太郎議員の行為を「請願法違反だ」と騒ぎ立てる人もいましたが、こういった批判は的外れになるかと思います。

逆に、憲法16条では、「何人も平穏に請願する権利を有し、何人も、かかる請願をしたためにいかなる差別待遇も受けない。」と明記しています。この点からして、請願をしたことを理由に何らかの処罰をするならば、これに反しかねません。

■「天皇の政治利用」について
今回の山本議員のパフォーマンスに対して、一部から「天皇の政治利用ではないか」と言う向きがありました。ここで「天皇の政治利用」というフレーズを用いることについてはやや違和感があります。

日本国憲法は、前述のように、天皇が行いうるのは憲法の定める国事行為「のみ」に限定しています(4条1項)。その趣旨は、天皇が政治力をもつことを排除するとともに、政府が天皇の権威を政治的に利用することを排除するためなのです。ここに本来の「天皇の政治利用禁止」の姿が表われています。政府がこの憲法の規定に反して、天皇を政治利用した場合、天皇の権威を利用して反対勢力の力をそぎ落とすことになり、国民主権の破壊となります。ここにこそ、天皇の政治利用が排除される根本原理があるわけです。

この点に関連して、現政府が国家主権回復記念の行事に天皇の臨席を仰いだことについて、これこそ天皇の政治利用だと非難する向きがあります。その当否はともかくとして、「天皇の政治利用」という言葉は、こういった政府権力への警戒感から出るべき言葉であって、一議員の行為をことさらこの言葉を利用して非難するのは少し違う気がしないでもありません。

■今回の処分について
今回は、大騒ぎの結果、参議院議院運営委員会では、山本議員の事情聴取を行い、最終的には、山崎参議院議長から厳重注意と皇室行事への参加を任期中は認めないとの処分が言い渡されたようです。この処分は、請願をしたためにいかなる差別待遇も受けないとする憲法からして気にはなりますが、議員としての品位に欠けた行為として仕方がないのかとも思います。意見が分かれるところかもしれません。


2014年1月1日  5:43 PM |カテゴリー: ニュース六法

Page Top